「ねえ、美奈ちゃん。覚えているかな。私が中学生の頃、私 大きな会社で働いて パパとママを楽にしてあげる って言ったこと。その時、美奈ちゃん じゃ私は ずっとパパとママの側にいて パパとママが 寂しくないように守るね って言ってくれたんだよ。」


麻有子は 言いながら涙汲んでくる。
 
美奈子は ハッとして、手で口を塞ぐ。


確かに 美奈子は言った。

麻有子のように 勉強することが嫌で。

勉強して お金を稼ぐより、両親の近くにいる方が 楽だと思ったから。
 

「そんなの、子供の頃 適当に言っただけだよ。」

美奈子は 困った顔で 麻有子を見る。
 


「ううん。美奈ちゃん、ちゃんと約束を守れるじゃない。それなのに私、自分ばかり 幸せになって。パパとママに、何も親孝行してないの。」

麻有子の頬を涙が伝う。
 

「そんなこと。何も思ってないわ、麻有ちゃん。」

母も涙汲んで言う。
 

「麻有子が 幸せなことが、一番の親孝行だろう。」

と父が続ける。