「パパ。先週、和君に聞いたんだけど。和君、いずれ この家を建替えて、パパ達と一緒に住みたいって言ってくれたの。」

絵里加達が2階へ行くと、麻有子は 父に言った。
 

「えっ。そうなの。そんな事、何も言っていなかっただろう。」

と父は美奈子を見る。
 
「私も先週、初めて聞いたの。」

と美奈子は肩をすくめた。
 
「へえ。嬉しいね。」

父は微笑んで言う。


「それでね、いずれ 一緒に住むなら 早い方がいいと思うの。パパ、この家 すぐに建替えたらどうかな。」

麻有子が言うと、父は驚いた顔をした。
 
「和君が 建替えるって言っているなら、俺は 早くしろとは 言えないよ。」

と言う父に、
 

「あの。家の建替え、俺に やらせてもらえませんか、お父さん。」

と智之が言った。
 
「そんな馬鹿な。」

と父と母は頷き合う。
 

「俺も、お父さんの息子だから。お父さんが お店を辞めたら、俺達で建替えようって、前から麻有ちゃんと 話していたんです。」

智之が言うと、父は困った顔で 母を見る。
 

「パパとママを 東京に呼ぶこととか、色々考えていたの。でも美奈ちゃんが結婚して、パパ達と暮らせたら、パパ達、東京に来るよりもいいかなって思うの。」

と麻有子は言い、
 
「だからって、智くんに 建ててもらう訳には いかないよ。」

父が言うと母も頷く。