「まだお父さん達、元気だから。全然、俺達の力とか 必要ないと思うけど。逆に、俺達の方が、お父さん達に 助けてもらうことになるけど。でも俺、仕事も軽井沢周辺だから。」

和哉の誠実な言葉に、美奈子の目は 潤んでくる。
 

「和君、ありがとう。すごく心強いわ。」

麻有子が言う。
 
「でも、お兄さんに 家を建ててもらうなんて。俺達が働いて、いずれ建替えます。」

和哉は 困った顔で言う。
 


「私、東京の大学に行って、パパに 随分負担かけたの。家を建てるくらいのお金、パパに出してもらっているから。私が 東京に出なければ、パパ、すぐに家を建てられたわ。」

麻有子の言葉に、智之は 優しく麻有子を見る。
 
「だから和君、俺にも 良い格好させて。和君の兄貴だから。お父さん達の気持ち、聞いてからだけど。もし、お父さん達が 納得してくれたら、家を建てさせて。」と言う。
 

「でも、そんな。」

和哉は困った顔で口ごもる。
 

「家を建てたからって、それで 責任が果たせると 思っているわけじゃないの。パパやママに何かあれば、その時は、もちろん 私達も手伝うわ。」

麻有子は静かに言う。

「そんなこと、わかるわ。お姉ちゃんのことだもの。」

美奈子は みんなの好意が 胸に沁みて 涙が溢れてしまう。
 

「和君のご両親の 意向もあるけど。でも、和君の気持ちが聞けて 良かった。」

智之が言うと、麻有子も頷き
 

「美奈ちゃんに 赤ちゃんが生まれても、ママと一緒なら、仕事続けられるし。」と言う。

麻有子は 両親のことだけでなく、美奈子のことも考えている。
 

「お姉ちゃん。私のことまで。」

と言って美奈子は 手で顔を覆う。

智之と麻有子の 好意が嬉しくて。


そして何より、和哉の心が嬉しくて。
 


「和君。私達が家を建てること、パパが建てると思って。それなら和君も 抵抗が少ないでしょう。」

麻有子の頬を 涙が伝う。

智之は そっと、麻有子の肩に 手をかける。



素敵過ぎる二人に、美奈子は 泣きながら見惚れていた。