「費用の心配はしないで。私達が 用意するから。」

と麻有子は言って、智之は頷く。
 

「馬鹿なこと 言わないで。私達が住む家、お姉ちゃんに 建ててもらえないわ。」

美奈子は 少し声を荒げて言う。
 


「違うわ、美奈ちゃん。パパとママの家よ。」

麻有子は優しく言う。

納得できない顔の美奈子に、
 


「麻有ちゃんは 長女だから。俺達が お父さんとお母さんの 近くにいるのが当然なんだ。お父さん達に、こっちに来てもらうことも考えたけれど。それも お父さん達の 負担になると思って。」

智之は静かに言って、美奈子と和哉の顔を見る。
 

「だからって。」美奈子が口ごもると、
 
「俺は、最初から そのつもりでした。一緒に住む、住まないは 別にしても。お父さん達の近くにいて、何かあれば 俺が力になりたいと 思っています。」

和哉は 美奈子に変わって口を挿む。
 

「和哉。」

美奈子も初めて聞く、和哉の気持ちだった。