12月に入ると、和哉と美奈子は 東京に行った。


廣澤家のみんなに 招待状を渡し、お父様に バージンロードの お願いをするつもりだった。
 

師走の渋谷は 凄い人出で、和哉と美奈子は 圧倒されて無口になる。

クリスマスムードの 人波を泳ぎながら、
 

「凄い人だね。」

と和哉は苦笑する。
 
「本当。私、こんな所では 暮らせないよ。」

と美奈子は言う。
 

「うん、俺も。こんなに人がいて、凄い情報量で。東京で生活している人って 人種が違うよね。」


和哉は、周りをキョロキョロ見ながら言う。
 

「そうだね。私、すごく怖いと思うけど。お姉ちゃんは、軽井沢の方が怖いって言うんだよ。」

美奈子の言葉に、
 
「へえ。お姉さんは都会的だからなあ。軽井沢じゃ 浮いてしまうのかもね。」

と和哉が答える。
 

「私は田舎者で。悪かったわね。」

と美奈子は笑った。