和哉は 美奈子が 廣澤工業の親戚だと言った時、驚いた顔で一瞬絶句した。
 

「美奈子、凄いな。俺なんかと 結婚していいの。」

と真剣な顔で言う和哉。
 

「当たり前でしょう。凄いのは 私じゃなくて、廣澤工業だから。うちは見ての通り、普通の家だよ。」

美奈子は苦笑する。
 


「でも、廣澤工業って、相当有名な会社だよ。お姉さん、そこの社長の家に お嫁に行っているんでしょう。俺とは大違いじゃない。」

和哉は 不安そうに言う。
 

「私とお姉ちゃんも、大違いだから。和哉も会えばわかると思うけど。うちはうち。廣澤家は廣澤家だから。」

美奈子は きっぱりと言い切る。
 


「お姉さんに反対されない?」

和哉は怖々と聞く。
 
「もちろん。逆に和哉、私を振ったら お姉ちゃんに怒られるよ。」

と美奈子は笑う。