「そろそろ結婚式場、予約しないとね。美奈子、どこか希望はある?」

和哉に聞かれた時、
 
「私、お姉ちゃん達が 結婚式をした教会がいいなあ。」

と美奈子は答えた。

和哉は嬉しそうに頷いて、
 

「明日、見に行ってみようか。」と言った。
 
「うん。何か照れるね。」と微笑んだ後で
 


「和哉、一つお願いがあるんだけど。」

と美奈子は珍しく言い淀んだ。
 
「何?言ってみてよ。」

和哉が聞くと、
 

「私ね、結婚式のバージンロード、廣澤のお父様と歩きたいの。」

と美奈子は言った。
 

「何だ、そんな事。別にいいんじゃない。美奈子のお父さんさえ良ければ。」

和哉は笑顔で答える。
 

「パパのことは、私が納得させるよ。ただ和哉のご両親、変に思わない?」

父親が いないならともかく、姉の舅に エスコートされるなんて、と美奈子は 少し躊躇っていた。
 

「大丈夫だよ、俺の親は。美奈子が したいようにすればいいよ。」

和哉は優しく言う。


美奈子は 理由もなく、何かをする子ではないと知っているから。