和哉は 仕事帰りに 美奈子の家に寄って、夕食を食べて帰るようになっていた。

美奈子の両親に 和哉の誠実さは伝わり、父も母も、和哉を信頼し 喜んでいた。
 


「美奈子。土曜日、冬タイヤに交換しようか。去年のタイヤ、まだ使えるでしょう。」

和哉に聞かれて、
 
「パパ。物置から出しておいて。」

と美奈子が答える。
 
「あっ。俺が出すよ。物置にあるの?」

と和哉は慌てて言う。
 


「今までは 何でもパパ任せで。これからは 和哉君任せか。美奈子は幸せだな。」


と父に言われて、美奈子は肩をすくめる。


「まあまあ。その分、元気に働くから。」

美奈子が ケラケラ笑うと、和哉もつられて 笑ってしまう。
 


「和君、美奈ちゃんの笑顔に騙されて。何でも 言うなりになったら駄目よ。」

と母も 困った顔をする。
 

「ママ。人聞き悪いなあ。私だって、和哉のことは ちゃんとやっていますから。」

と美奈子は母を睨む。


そんな会話を笑顔で聞いていた和哉は、

「お父さん達に 守られてきた美奈子だからいいんです。お父さん達以上に、俺も 美奈子を大切にします。」と言った。


美奈子の胸を 甘い幸せが満ちてくる。
 

「ダメダメ。美奈子は頭に乗るから。和哉君、ビシッとやってよ。」

と父が言い、母も隣で頷く。
 
「もう。ひどいなあ。」

と言いながら、美奈子は 微笑んで和哉を見る。


和哉は 温かい笑顔で 美奈子を見つめ返した。