父と母も来て、賑やかで楽しい食事は始まる。
子供扱いに慣れた和哉は、子供達とも自然に話している。
「ねえ、お父さん。明日、和君と釣りに行ってもいい?」
樹と翔が、お兄様に言う。
「北軽に、渓流釣り、できる所があるんです。俺、危なくないように見ますから。」
と和哉がお兄様に言う。
「それ、俺達も一緒に行きたいよね。」
と智之は お父様とお兄様を見て言う。
「みんなで和君、占領して。美奈ちゃんに叱られるわよ。」
とお姉様は笑う。
「私は大丈夫よ。絵里ちゃんとデートするからね。」
と美奈子は 絵里加と微笑み合う。
すっかり打ち解けた和哉は 渓流釣りの話しに、みんなを引き込んでいる。
賑やかな笑い声が弾ける中、麻有子は
「美奈ちゃん、待っていた甲斐があったじゃない。」
とそっと美奈子に言う。
「お姉ちゃん、私、大丈夫だよね。間違ってないよね。」
美奈子は 真剣な目を麻有子に向けて、小声で言う。
「大丈夫よ。何も心配しなくていいわ。全部、上手くいくから。」
麻有子は 美奈子の肩に手を置き、優しく はっきりと言う。
「お姉ちゃん。」
と言葉に詰まる美奈子。
幸せな不安に甘く涙汲み。
春の夜は、柔らかな華やかさで。
誰かを愛して、みんなに認められて。
自分にも、こんな日が来るなんて。
美奈子はそっと和哉を見て俯いた。



