「ねえ、和哉。私達、いつの間にか 結婚することになっているけど。私、和哉に プロポーズされてないよね。」

美奈子が言うと、和哉は 一瞬ギクッとした顔になる。
 

「それは。別に、いいでしょう。」

と口ごもる和哉。
 
「いいわけ ないでしょう。私、断るかも知れないじゃない。」

美奈子は言う。
 
「断らないよ、美奈子は。大丈夫。」

クスッと 笑って言う和哉に、
 
「そういうことじゃなくて。ちゃんと言ってよ。」

美奈子も食い下がる。
 

「俺、苦手なんだよ。わかっているんだから、いいじゃない。」

照れ屋の和哉は、気まずそうに 笑ってごまかす。
 
「駄目。けじめだからね。一生に一回しかないんだよ。」

と美奈子も譲らない。


和哉は 左右を見たり、モジモジ動いた後で
 

「美奈子。俺と結婚して下さい。」

と少し早口で言った。

甘い幸せが胸に溢れ、美奈子は 頬を染める。
 

「はい。喜んで。」

少し俯いて、上目使いに 和哉を見ながら美奈子は言う。


和哉は 弾けるような笑顔で 美奈子を見つめる。