夏休みに美奈子は、和哉の実家へ 挨拶に行った。


同じ長野県でも 軽井沢から 車で3時間近くかかる山間部。

和哉は 大学生の時から 実家を出て 一人暮らしをしていた。


「和哉が 婚約者連れて来るって言うから、昨日は みんなで掃除をしたんだよ。」

和哉に似た、がっしりとした体格のお父さんが 明るく言う。



「可愛くて、優しそうで。和哉には もったいないね。」

お母さんが そう言って笑う。


和哉は 美奈子の顔を見て、
 
「こう見えて、中々恐いんだ。」

と言うと、
 
「奥さんは 恐いくらいの方がいいんだ。母ちゃんを見てみろ。」

とお父さんが笑う。
 

「失礼だね、美奈子さん。和哉のこと、宜しくお願いしますね。」

とお母さんは言い、
 

「いいえ。私こそ、至らない所だらけで。お父さん、お母さん、これからも宜しくお願いします。」

と丁寧に 頭を下げる美奈子。


少し しんみりした空気が流れる。
 


「二人とも 大人だから。俺達は 何も心配してないよ。これからは、二人で 納得がいくまで話し合って、悔いのない生活を してくれればいいよ。」


お父さんの温かい言葉に、美奈子は 涙汲んでしまう。