秋の軽井沢は どこもいい雰囲気で 恋の始まりの二人を 甘く包む。


車を降りて、並んで歩く二人。

不器用な和哉は、肩を抱くこともせず。


ゆっくり話しながら、歩いては立ち止まり。


ベンチに座ってまた話す。



「俺、あまり恋愛経験なくて。スマートにリードできなくて。」

と言う和哉に、

「私も同じです。そういう小島先生だからいいんです。」

美奈子が言うと

「その先生って言うの、やめましょう。」

和哉は 恥ずかしそうに言う。


「小島さん?」


美奈子が聞くと、


「和哉でしょう。」

と和哉は 照れて言った。
 


「じゃ、私も美奈子で。あと、敬語もやめましょう。」


美奈子の言葉に、和哉は満足そうに頷いた。



「明日も会いたいな。」

と美奈子の目を 探るように見る和哉。

美奈子は甘く頷く。
 


「うん。私も。」


朝、感じた 胸の熱さが美奈子を包む。

自分は 和哉に恋をしている と美奈子は思う。


それは新鮮な驚きで。



そして大きな不安でもあった。