「良い学校に行っている子供って、やっぱり優秀なの?」

ベテラン保育士が、話しに加わる。
 
「優秀かどうかは、わからないけど。でも姉の子も、その従兄妹達も、うちの園にいる子供とは、全然違いますね。」

美奈子は堂々と答える。
 
「そうなの?どう違うの。」

帰り仕度をしながら、みんなが興味津々で聞いている。
 


「ちゃんと 自分の意志表示ができるから 愚図ったり モジモジしないんです。大人の顔色を伺うような所もないし。伸び伸びしているけれど お行儀が良くて。」

美奈子が言うと、みんな驚いた顔をする。
 
「すごいね。お姉さん、どうやって育てているんだろう。」

美奈子よりずっと年上の、ベテラン保育士は言う。

「そうなんです。私も興味があって 見ているんだけど。特別な事は してないですよ。ただ、家族で すごくよく話していて。子供達の話しも、真剣に聞いてあげていますね。片手間じゃなくて。」

美奈子が言うと、
 
「そういう当たり前のことが、なかなかできないのよね。」

とベテラン保育士が言い、みんなが頷く。
 
「良い子は一日にしてならず、ってことだね。」

と春菜が言い、美奈子は笑う。
 
「でも普通の子は みんな、うちの園にいるような子だから。」

と言う美奈子に、みんなも納得した顔になる。
 

麻有子の家族は 特別だから。

そんな姉がいることは 誇らしい。


でも美奈子は、麻有子を目指しているわけではない。

そんな美奈子の気持ちを 理解できる人は少なかった。