麻有子は いつも、お母様やお姉様と一緒にいる時間が 大好きだと言っていた。


午後、別荘の庭で お茶を飲む時間。

美奈子と母も一緒に。


お母様もお姉様も、穏やかで明るくて。

美奈子は 麻有子の気持ちがよくわかる。
 

「美奈ちゃん、恋人いないの?」

お姉様に聞かれて、
 
「全然、出会いがないんです。私、一生このままかもしれない。」

美奈子は答える。
 
「大丈夫よ。美奈ちゃん、良い子だもの。必ず良い人と出会えるわ。」

お母様は 優しく微笑んで、美奈子に言う。
 

「美奈ちゃん、呑気だから。焦った方がいいのよ。」

母が 困った顔で言うと、
 

「焦らなくても 縁がある人には、絶対に どこかで出会うから。沙織ちゃんや麻有ちゃんみたいに。ねっ。」

とお母様は笑う。
 

「もう。お母様。」

お姉様と麻有子は、声を揃えて笑う。
 
「そうか。じゃ私、待っていても大丈夫だね。」

美奈子が明るく答えると、
 


「ただ待っていても駄目よ。運命の人が 気付かないで 通り過ぎて行っちゃうわ。」

と麻有子は からかうように美奈子を見る。
 
「えっ。」と驚く美奈子に、
 
「大丈夫よ。毎日を一生懸命、過ごしていればいいの。そうすれば必ず、運命の人が 気付いてくれるわ。」

とお姉様は笑って言った。
 

「うーん。一生懸命ね。」

と考える顔の美奈子に、
 
「美奈ちゃんはいつも素直で、一生懸命だから。ねっ。」

とお母様がお姉様と頷き合う。