「ねえ、お姉ちゃん達、連休に来るの?」

ゴールデンウィークが近付いた日、美奈子は母に聞く。
 
「うん。後半に来るって。」と言う母に、
 
「絵里ちゃん、学校、楽しそう?」

一年生になった姪の絵里加を心配して、美奈子は聞く。

「すごく 楽しそうに 通っているみたいよ。絵里ちゃん、良い子だから。大丈夫よ。」

母の言葉に美奈子は頷く。
 


美奈子は 姪の絵里加と 甥の壮馬を、とても可愛がっていた。

利発で 物怖じしなくて。

お行儀がよく、子供らしい好奇心も旺盛で。

絵里加と壮馬がいれば、自分の子供は いなくてもいいと 思ってしまうくらい。
 


「絵里ちゃんも壮君も可愛いからなあ。今度は どこに連れて行こうかな。」

美奈子が ニコニコしながら言うと、
 
「人の子供ばかり 可愛がっていないで。美奈子も 自分の子供を産みなさい。」

父が、珍しく 常識的なことを言う。
 
「やだよ。自分の子供は 責任重大だもの。」

美奈子の答えに、父は やれやれと言う顔をする。
 

「まあ、一人じゃ 子供は作れないから。仕方ないな。」

呆れたように言う父に、
 
「そうそう。不甲斐無い旦那の 面倒見るくらいなら、一人でいた方がマシだよ。」

美奈子は ケラケラと笑って答えた。
 


父や母が 心配し始める年齢。

それがわかっているから、美奈子は あえて明るく振舞う。
 

「いくら待っていても、智くんみたいな人は いないのに。知らないわよ。」

母は、少し責める目で 美奈子を見る。
 

「私が お嫁に行ったら、パパとママ、寂しいでしょう。」

美奈子も応戦する。
 

「俺達のせいみたいに言うなよ。」

と父は 美奈子を睨んだ。