感染症研究センターでは、数多くの職員が忙しそうにあちこちを動き回っている。病原体を調べたり、新薬の開発を急いでいたり、立っていても座っていても忙しそうだ。

「忙しそうね」

玲奈の言葉に、洋一は「仕方ありません。恐ろしい感染症は世界のどこかで流行っています。こうしている間にも誰かが命を落としているんです」と真面目な顔で言った。

「でも、僕たちが頑張れば誰かを助けることができるんです。だから僕はこの仕事を誇りに思っていますよ」

「お前、立派なこと言うなあ!」

透は感動し、洋一の肩に腕を回す。玲奈が「子どもっぽいことを」と呆れているが、自分のことを少しでも見てほしい。透は玲奈に笑顔を向け、洋一に「あれは何してるんだ?」と質問をして玲奈と洋一の距離を離した。

「宍戸さん、ようこそおいでくださいました」

穏やかな声がして透が振り向くと、小太りの優しそうな男性が微笑みながら立っている。洋一が姿勢を正し、「所長、お疲れ様です」と声をかけた。