「もしも、子どもが先に死んでしまっていたら私に遺産を受け取る権利は発生しなかった。偶然って恐ろしいわね」

父が残してくれた何億ものお金で玲奈はアメリカに留学し、夢だった寄生虫学者になるため医大に通うことになったのだ。

しかし、寄生虫について学ぼうと思う女性は玲奈ただ一人だった。周りにいるのは男性だけで玲奈は変な目で見られてしまった。玲奈自身はさほど気にしていなかったものの、嫌がらせは少なからずあった。そんな中、玲奈に宗一は声をかけてくれたのだ。

「あの、隣に座っていいかな?」

講義が始まるため席に座った玲奈に、宗一が話しかけてきた。周りにはまだ席はたくさん空いている。玲奈は首を傾げた。

「他にも席は空いているわ。一体なぜ?」

「君と、仲良くなりたいから」

それは玲奈が初めて言われた言葉だった。胸がくすぐったい感覚に、玲奈は驚いてしまう。そこから、宗一とよく話すようになり、自然と交際が始まった。