その日の夜、玲奈は研究所の自分の部屋に戻ると、アルファベット事件のことが書かれているノートを取り出し、目を通す。

「宗一……」

幸せそうに笑う宗一の写真を見た刹那、玲奈の瞳から涙がこぼれ落ちた。それは、普段決して人前では見せることのない涙だ。

「あなたと会ったのは、初めて大学で講義を受けた時だったわね……」

玲奈は写真の中の宗一に語りかける。頭の中に思い出が鮮明に蘇ってきた。

玲奈の家は、もともとは小さな診療所を経営するごく普通の家庭だった。両親は幼い頃に離婚し、玲奈は母と二人で暮らしていた。

玲奈は幼い頃から同い年の女の子とどこか違っていた。周りがかっこいい俳優や少女漫画に胸をときめかせている間、玲奈は少年漫画を読んだり勉強をしたりする方が好きだった。

「何これ……すごい……!」

小学校高学年の頃、玲奈は少年漫画で寄生虫をテーマにしたものを初めて目にした。その時に強く寄生虫というものに惹かれたのだ。そして、寄生虫について学びたいと思った。