『橘』
 つまり、ひよりちゃん。


 どうしてだろう。
 また締め付けられる、胸が。

 苦しくて苦しくて呼吸をすることが困難になりそうだ。



「隼翔兄?」


 葵、いつの間に部屋に戻っていたんだ。


「どうしたの、隼翔兄。
 なんだか苦しそうだけど」


「大丈夫、何でもない。
 ひよりちゃんとの通話は終わったのか」


「うん、終わったよ。
 よくわかったね。橘と話していたこと」


「微かに聞こえてな」


「そうなんだ」


「葵さ、
 ひよりちゃんと付き合ってるんだろ」


 って。
 何を言っているんだ、俺は。