「……そういえば…………」


 太一は何かを話しかけた。


「……そういえば?」


 オレは太一に訊き返した。


「そう。そういえば」


 太一はまだ言わない。


「だから何だよ」


 オレはしびれを切らした。


「うん……えっと……だからさ……そういえば……お前の……好きな人の話、一度も聞いたことないなって思ってさ」


「え……」


 太一……?


「……誰かいないのか、そういう人」


 た……太一……。

 なぜ、いきなりオレの好きな人の話になるんだ。


「……太一、オレの話はいいんだよ」