しばらくして葵が「そろそろ昼ごはん食べない?」と言ったのを聞いたとき、もうそんな時間なのだと思った。

 やはり楽しい時間や幸せな時間とか、そういう良い時間はあっという間に過ぎるように感じる。





 そして昼ごはんを食べ終わったオレと葵は、さっそく、いつもの思い出のあの場所に桜を見に出かけた。


 いつもの思い出のあの場所に行く途中の道にも満開の美しい桜の木がたくさん並んでいて、オレと葵は、その満開の美しい桜を見ながら、ゆっくりと歩いていた。


「桜、きれいだね」


 葵は、その桜の美しさにとても感動している様子だった。


「ああ、きれいだな」


 オレも桜の美しさにとても感動していた。


 この美しい桜の道を葵と歩いていると思わず葵と手をつなぎたくなった。


 ……だけど、まだ母さんや義父さんや姉ちゃんにもオレと葵が恋人同士になったということを言っていないのに、もし母さんたちよりも先に誰か知っている人たちにオレと葵が手をつないでいるところを見られたら……そう思うと……。