「んー、綾川さんのごはん忘れられなくて。朝から食べたいなって」
そんな寝起きのぽやーっとした顔で見つめられたら否が応でも入れてしまうよね……不可抗力………
「お邪魔しまーす」
にこにこしながら一ノ瀬くんは私の家に遠慮なく入って床にぺたんと座る。
それから勝手にテレビをつけ始めた。
__んもー、なんなの。この自由人。
ほんとに今まで出会ったことのない人種だ。
「あ、そういえばさ綾川さん。メアド交換してないよね。交換しよ」
「えっ!あ、ああ、いいよ……」
まあ一応お隣同士だし、私、何か知らないけど一ノ瀬くんの料理係になっちゃったし?
でも、こんなイケメンで女絡みまったくない一ノ瀬くんのメアドなんて、超レアなんじゃ……
「はい、どーぞ。」
一ノ瀬くんはさらっと綺麗な字でチラシ紙の裏にメアドと電話番号をメモすると、私に差し出してきた。
それにしてもこの人手綺麗だなぁ。
ぱっと顔を上げると、その整いすぎている美しい顔が目に入る。
………ほんっと何から何まで完璧だ。
透き通る黒い瞳に切れ長の目。
鼻筋はすっとしていて形のいい唇は薄赤色で潤っている。
まつげはとても長くて、輪郭もシュッとしているんだからもう言うことない。
首元の喉仏とか、寝間着のゆるいTシャツから覗く鎖骨とかからすんごい色気が放出されていて、思わずドキドキしてしまう。
こんな人が毎朝うちに来るのか…
ほんとやばいな……
「ねー、綾川さんってなんのバイトしてるのー?」
テレビを見ながら一ノ瀬くんが尋ねてくる。
そんなだるそうな横顔すらかっこよくてしょうがないんだから困ったものだ。
「ええと…私はファミレスのバイト…してる、よ?」
「へぇー、そなんだぁ。俺はカラオケ」
えー、意外。一ノ瀬くんがカラオケのバイトなんて想像もつかない。
見てみたいなぁ、なんて。
わっ、私ってばなんてことを。

