顎に触れる 何かの感触に 樹が目を覚ますと 恭子の指が 樹の顔を撫でていた。
 

「ずっと起きていたの?」

恥ずかしそうに 樹と目を合わせる恭子に 樹は優しく声をかける。
 
「さっきだよ。樹さんよく寝ているから ちょっと触ってみたの。」

朝日は 恭子を さらに幼く見せる。

樹の胸を 愛おしさが込み上げて 恭子の頭を胸に抱きしめる。
 


「いたずらして。悪い子だ。」

言葉とは逆に 優しく髪を撫でる。

恭子は 樹の胸に そっと唇を這わせる。
 

「こら。もっと悪い子だ。」

甘いときめきと 溢れる愛しさで 樹は恭子の唇をふさぐ。

朝の羞恥と せっかちな体は いたわりよりも 喜びを優先してしまう。


「ごめん。俺、夢中になっちゃった。」

樹は 照れた目で、恭子に言う。
 
「ううん。樹さんの顔、素敵だった。」

樹の肩に 頭を乗せて 恭子は答える。
 
「やめてよ。恥ずかしいよ。」



さらに照れる樹に 恭子は 甘く続ける。
 
「本当だよ。樹さんの 気持ち良い顔見ていたら 私も すごく気持ち良くなっちゃった。」
 
「恭子、大好きだよ。こんなに誰かを好きって思ったの 初めてだよ。」

樹は正直に言ってしまう。


「うれしい。樹さんの初恋?」

恭子の言葉は、いつも樹を幸せな気分にする。
 
「そうだよ。恭子は初恋の人。」

樹は、優しい目で恭子に言う。
 

「同じだね、私と。樹さんも、私の初恋だから。」

恭子は そう言って 樹に抱き付いてくる。


樹から溢れる愛しさは 恭子を甘く優しく包み 二人を幸せな気持ちにする。
 


「恭子。可愛くて、大好きで。いっぱいわがまま聞いてあげたい。」


ぎゅっと抱いたまま樹が言うと
 
「じゃあ、もう少し、このままでいて。」

と恭子は 強く抱き付いてくる。
 

「いいよ。ずっと。いつまでもね。」

こんな風に すべてを満たされた交わりは 初めてだった。