「恭子。愛している。」

樹は また立ち止まり 恭子を抱きしめる。
 
「ありがとう。私も。」


恭子が そっと顔を上げて 樹を見た時 樹は静かに 唇をふさいだ。


最初はそっと触れ 徐々に強く触れていく。

恭子の体が 柔らかく 樹に寄り掛かって来たとき 樹は 恭子の唇に入っていく。


恭子の 甘く優しい感触は 樹から 自制心を奪ってしまう。

樹の腕に 恭子の体重がかかってくる。


ふと我に返った樹は そっと唇を離し 恭子の頭を胸に抱く。
 

恭子は 荒い呼吸で 背中を震わせていた。

樹は 何も言わずに 恭子の背中を撫で続ける。

しばらくして 樹の胸の中 そっと顔を上げた恭子は 小さな声で、
 


「もう一度、キスして。」と言った。

樹から 溢れる愛おしさは 熱く激しくなって 恭子の唇をふさぐ。


眩暈のような 目くるめく感触に ようやく自分を抑えた樹は 恭子から唇を離す。


おでこを付けて 恭子を見つめ
 

「恭子、狼を起こしたね。」と言う。


「狼は、私かも。」と可愛く言う恭子。


まだ狼の 本当の怖さを 知らないから。


でも しばらくは、恭子の狼に 翻弄されてもいい。


喰われるふりをしてあげるよ。


樹は、もう一度 短いキスをして 静かに歩き出した。