樹は 家族に祝福された 明るい付き合いがしたかった。

健吾と絵里加のように みんなの気持ちを明るくできるような。


だから、家族をないがしろにはしたくない。
 

「驚いたけれど、恭子ちゃんは良い子で 間宮さんも良い方だから。安心よね。」

母は 落ち着いた顔で言う。

お祖母様の顔を見て。
 

「樹が 選んだ子だものね。いい子に 決まっているよね。」

お祖母様の 優しい言葉は 樹を 泣きたい気持ちにさせる。
 
「お祖母様、ありがとう。」

樹は お祖母様の手を取って 静かに言う。
 


「ねえ樹。恭子ちゃんの どこが好きなの。」

いきなり智くんが聞く。
 
「えっ。ここで言うの?」

樹は ギョッとした顔をする。
 
「智くん、ケンケンにも聞いたの。初めてうちに来た時に。」

と麻有ちゃんが笑う。
 
「いじめか。」

と言う樹を 智くんは 促す目で見る。
 


「恭子といると ほっとして寛げるんだ。自然な自分でいられて。いつも穏やかに 笑っていられるんだよ。」

樹は、照れながら言う。
 
「恭子ちゃん 素直だから。明るくて可愛いものね。」

と麻有ちゃんが言う。

絵里加と 仲が良い恭子ちゃんを 麻有ちゃんはよく知っているから。
 


「恭子ちゃんは 良い子よ。元気で明るいけれど 出過ぎないし。樹と 結婚してくれたら最高だわ。」

娘になるだろう恭子に、母は愛情を示す。
 

「間宮さんの家とは 本当に 縁があったんだね。お互い良く知っているし。本当に良かったよ。」

父の言葉に、みんなが頷く。
 

「さしあたって、どうすればいいの?」

せっかちな母は 今すぐにでも 恭子を迎える気になっている。
 
「まだ、何もしなくていいよ。恭子が 大学を卒業するまでに ゆっくりと馴染んで行ければ。」

樹は 温かい気持ちに満たされる。
 

「時々、うちにも連れてきてよ。」と言う母に、
 
「嫁いびりしないでよ。」と樹が笑う。
 
「失礼な子ね。」と母は膨れて みんなが笑う。


小さな頃から 続いている家族の光景。

これからは 樹と健吾を中心に 同じように続けていきたい と樹は強く思っていた。