翌日 智くんと ランチをしながら 樹は 相談してしまう。


「俺は、わかっていたよ。樹 良い顔になったから。いいと思うよ。」

やっぱり と言う思いで 智くんを見る。
 
「恭子が 卒業するまで 言わない方がいいのかな。」

でもそれは 長く嘘を つくことになるから。
 

「娘の父親としては 早く言ってもらいたいかな。後から知って、あの時も 付き合っていたのか、って思うよりもね。」

智くんは、いつも親身になって 答えてくれる。
 

「俺、変に思われませんか。7才も年上なのに。」

樹が言うと、智くんは 心地よく笑う。
 
「思わないよ。樹が真剣ならね。でも 兄貴は 全く気付いてないよ。」

恭子の両親 だけではない。

自分の親にも 話すことになる。
 

「ですよね。まあ 俺の親には 何も言わせないです。恭子は すごく良い子だから。」

樹が言うと 智くんは 温かい目で樹を見て
 
「恭子ちゃん、良い子なのわかるよ。ケンケンの妹だからね。俺はすごく嬉しいよ。ずっと長く付き合っていけるじゃない。」

絵里加たちと、と言う言葉を 智くんは言わなかった。

樹の思いを知っているから。
 


「姫の側にいると、ドキドキして 緊張感があって。本当に特別な女の子です。恭子は 一緒にいると寛いで 癒されて。飾らない自分でいられます。」

樹は、言い訳のように 言ってしまう。

絵里加を 簡単に諦めた訳ではないことを。
 

「わかるよ。父親が言うのもなんだけど 絵里加は 特別だと思う。だから、絵里加を選んだケンケンは すごいと思うよ。」

智くんは そう言って 樹の顔を見た。
 

「恭子ちゃんは 若くても 穏やかで思いやりがあって わきまえた女の子だよ。ずっと樹の力に なってくれると思うよ。」

智くんの言葉に、樹は大きく頷く。
 


「俺、恭子の両親に 挨拶します。本気だから。いいですよね。」

樹の言葉に、智くんは 大きく頷いてくれた。
 

「大丈夫。間宮さんは、わかってくれる人だから。」

樹は 晴れやかな笑顔になる。
 

「頼むよ、4代目。」

智くんは 樹の肩を叩いて笑う。

ほっとしたのだろう。

絵里加に失恋した樹が 前を向いたことに。
 

「任せて下さい。壮馬と一緒に 親父と智くんを超えるから。」

心地よい笑い声で ランチから戻る。


今夜、恭子に話そう。


これからは、恭子に演技をさせないと。