恭子の脇に、そっと車を 滑りこませて ハザードランプを灯す。
 

「ごめんね。待った?」

助手席の窓を下ろして 樹が聞く。

恭子は、ドアを開けて 車に乗り込み、
 

「おはようございます。」

と元気に言う。

樹も 笑顔がこぼれてしまう。
 


「あれ。可愛いね。」

恭子は、ピンクのワンピース姿で。

肩にかかる髪を ゆるく巻いて いつもより大人っぽい。


樹が 恭子を見て言うと 満面の笑顔が返ってくる。
 

「良かった。似合う?」

少し頬を染める 恭子に、
 
「大人っぽくていいよ。18才だからね。」


車を発進させる前。

樹はそっと横を向いて言う。

恭子は、嬉しそうに頷く。


「お誕生日、おめでとう。」

と樹は 車のドアポケットから プレゼントを差し出す。

驚いた顔で 樹を見つめる 恭子。

樹が頷くと、両手で受け取る。
 

「ありがとう。嬉しい。」

恭子は、プレゼントを 胸に抱いた。

そのしぐさが可愛くて 樹の胸は 熱くなる。
 

「開けてもいい?」

恭子に聞かれ 樹も笑顔で頷く。

いつも元気な恭子が 静かに 包みを解いて 箱を開ける。
 

「わあ。」

と言って ペンダントを取り出すと そっと両手で包む。

ダブルハートのペンダントは ロゴの入ったプレートとピンクのハートのプレート。
 

「すごく嬉しい。」と言って。
 
「気に入ってもらえたかな。」

いつもより静かな恭子に 不安になって聞くと。
 
「もちろん。可愛い。」

とそっと樹を見上げた。

愛しさが溢れる自分に苦笑して
 
「出発するよ。」と樹は、車を発進させた。