店を出て 並んで歩く。

お土産の袋が大きくて、二人の間で 邪魔をする。
 

「こんなにたくさん。持ってくるの、大変だったでしょう。」

恭子の手から 大きな袋を取って、持ってあげる。
 
「だって。絵里ちゃんちでしょう。壮君ちでしょう。お兄さんちでしょう。自分の家でしょう。あと、行けなかった友達のも。」

恭子は、数えながら 明るく笑った後、
 


「一番大切なのが、一番小さかった。」


と小声で言った。


樹は 胸が熱くなり いつものように ケラケラと笑えない。

優しく微笑んだ後で、そっと
 
「ありがとう。」と言った。

そして、樹を見上げて 首を振る恭子の手を 握ってしまう。

一瞬、はっとした恭子は すぐに 手を握り返してくれる。


小さな柔らかい手。
 

「卒業するまでは、内緒だよ。」

樹の提案に 大きく頷く笑顔は とても嬉しそうで。
 

家までの 10分ちょっと。

甘い切なさで、手を繋いで歩く二人。


まだ何も言えないし、何もしてあげられない。

せめて大学生にならないと。それまでは、このまま。
 

「お土産のお礼、しないとね。今度、食事しようか?」

歩きながら、樹が言う。
 
「二人だけで?」

弾けるような笑顔で、樹を見る 恭子に 樹は笑って頷く。
 
「もちろん。でも昼間だよ。」

恭子は 少し不満気に 顎を上げた後、

「仕方ないか。」と笑顔で頷く。


『君が 早く大人になれば、何でもしてあげるよ。』




樹は 胸に満ちてくる 恭子への思いに 少し戸惑っていた。。