相変らず、両方の家を 行き来している 健吾と絵里加。


どちらの家族も 二人を 自然に受け入れていた。

絵里加は、以前よりも 落ち着いた美しさを 手に入れて。


若奥様のような雰囲気を 身に着け初めていた。


初めての 旅行から戻って 涙汲んだ目で 樹を見上げた絵里加。

今は 前を向いて、健吾との生活の為に 努力をしている。

麻有ちゃんから 家事や料理を習い 樹の家に お裾分けを届けてくれる。
 

「姫、この間の餃子、すごく美味しかったよ。また頼むよ。」

樹が言うと、絵里加は 照れた笑顔で、
 
「本当?良かった。今度は、焼売作るね。」と言う。
 

「何、中華に 凝っているの?」

明るく聞く樹に、
 

「中華って、一度に たくさんできるから。恭子ちゃんにも、取りに来てもらうのよね。」

と絵里加と恭子は、頷き合う。

恭子の 嬉しそうな笑顔に 樹はほっとする。



絵里加の笑顔ではなく、恭子の笑顔に 心が動いた自分に、樹は狼狽していた。