絵里加の バレエ公演に、今回 樹は行かなかった。

健吾が来ることは、わかっていたから。


公演の前の練習で、帰りが遅くなる絵里加を 毎日 健吾が送っていると 母から聞いていた。

健吾の優しさに感心し、その好意を 素直に受ける絵里加にも 感心していた。


絵里加に対する思いを、智くんに ポロッと 洩らしたことで 樹の心は だいぶ楽になっていた。


まだ辛いけれど。時間が解決してくれる。

もう少しすれば。


闇に葬られる気持ちを、智くんだけでも 知っていてくれる。

そう思うことが 救いになっていたから。