「とりあえず、引越しだから。お蕎麦を 食べに行きましょう。」

と言うお祖母様の声で みんなで歩く。

お祖母様、父と母。智くんと麻有ちゃん。そして樹と恭子。
 

お祖母様と入れ違いに 自分の家に帰った絵里加は 今日は 健吾の家に行っているらしい。
 

「ケンケンが すごい子煩悩で。家にいる時は 結ちゃんを 離さないらしいの。」

と麻有ちゃんが言う。
 
「智之も、よく面倒をみていたものね。」

とお祖母様が言うと、
 

「俺どころの レベルじゃないんだ。親になったスタートは 絵里加と一緒だから、絵里加に できる事は 自分にもできるって。何でもやりたがるらしいよ。」

智くんの言葉に、みんなが驚く。
 

「お兄ちゃん、絵里ちゃんのこと 大好きだから。結ちゃん、絵里ちゃんに そっくりだもの。」

と恭子が言う。
 

「そういうこと?」

樹が言うと、恭子は首を傾げて、
 
「私も 樹さんそっくりの赤ちゃんだったら 誰にも 抱かせないかも。」と言う。


みんなが 声を出して笑う。
 

「恭子ちゃん、大丈夫よ。樹に似ていなくても お腹を痛めた子は 可愛いから。」

と母が言うと、麻有ちゃんも頷き、
 
「そうそう。できが悪くても 本当に可愛いのよ。」と言う。


「お母さんも 絵里ちゃんママも。できの良い子しか 育てていないくせに。」

と恭子は口を尖らせる。

素直な言葉が可愛くて、みんなが笑ってしまう。


樹は 愛おし気に 恭子を見つめて、優しく微笑む。
 
「大丈夫。あなた達の子供も 絶対に良い子だから。」

と母に言われて、はにかむ恭子。


まだ幼いけれど こうして少しずつ 家庭の意味を理解していく。