「お母さん、夕食、何にしますか。」

まだ学生なのに、一生懸命 奥様になろうとする恭子。

意地らしくて、可愛くて。
 

「面倒でしょう。何か食べに行く?」

炊事の嫌いな母が言うと、
 
「でも明日は みんなと外食するから。簡単な物なら、私、作ります。」

恭子の言葉に、みんなが微笑む。


「ありがとう。じゃあ、お鍋にしましょうか。恭子ちゃん樹と 材料買ってきて。」

母の言葉に 頷く恭子。

樹も デレデレと 笑顔になってしまう。
 

「恭子ちゃん、牡蠣とかアワビとか いっぱい買ってきて。」

父が笑顔で言い、母に睨まれる。
 
「恭子ちゃん、イワシでいいから。」

と言う両親に見送られ 樹と出かける恭子。


幸せそうな笑顔で。

友達は、まだ学生のまま 甘えているのに。

自分の親よりも 樹の家族を選んで 樹の為に尽くしてくれる。
 


肩を抱いて歩きながら 樹は胸が熱くなってしまう。


自分が20才の頃は もっと幼稚だったと思いながら。

肩を抱いた手で 恭子の頭を撫でると 恭子は 不思議そうに樹を見上げる。
 

「いっぱい甘えて いっぱいわがまま言って いいからね。」

樹の目からは 愛が 溢れていた。

恭子は ニコッと笑って、樹の肩に 頭を寄せる。
 
「恭子が甘えるの、大好きだから。」
 
「じゃあ、帰りにソフトクリーム買って。」
 

「えー。ご飯の前に、甘い物食べたら駄目だよ。」
 
「やーだ。食べたいの。買って。」
 
「もう、仕方ないなあ。今日だけだよ。」


そんな会話が 二人を熱くする。

家族と一緒という制約が、さらに夜を甘くする。


今夜 恭子を抱いて 力尽きるまで 求めてしまう自分を思って 樹の体は もう熱くなっていた。