「間宮さん次第だけど。そうなると 出来上がるまでに 一年近くはかかるから。もう遅いくらいだよ。」

父の急ぐ言葉に、
 

「お祖父様の 一周忌も済まないうちに 解体するのは嫌だわ。」

母は 苦い物を 噛んだような顔をする。
 

「今すぐ 壊す訳じゃないから。設計して間取りを決めて。解体は 一周忌の後にすればいいだろう。」

父の言葉に、みんなが頷く。
 

「この歳になって 新しい家に住めるなんて 最高だね。」

とお祖母様は言う。

思い出の家を なくす寂しさを隠して。
 


「樹達に 土地を買って 家を建てることを考えれば 相当な家が建つよ。思いっきり 贅沢な家にしよう。」

父は 気楽な事を言い 母に軽く睨まれる。
 




恭子はなんて言うだろう。

明日、ご両親と一緒に来る恭子。


樹はすぐにでも知らせたい思いを抑える。

直接、驚く顔が見たいから。


堅実な恭子は、案外反対するかもしれない。

“今のままで十分です” と言う恭子の声が聞こえる気がする。