「恭子ちゃん 運転の練習 しないの?」

絵里加に聞かれて 恭子は 樹の顔を見る。
 

「姫、止めてよ。恭子のスノボみたでしょう。無謀なんだから。運転なんか させられないよ。怖くて。」

樹が言うと 絵里加はプッと吹き出し 健吾は大きく頷く。
 

「そんなことないんだけどなあ。」

と小さく口を尖らせて。
 
「そう言えば 最初は 麻有ちゃんの運転も 怖かったわよね。」と母が言う。
 

「そうそう。見かけによらず過激で。強引に 車線変更もするし。」

と智くんが続ける。
 

「えー。そんなことないよ。私、慎重だもの。」

麻有ちゃんの言葉に 智くんは声を出して笑う。
 

「しかも麻有ちゃん 俺のワゴン車を 運転していたんだよ。マンション 一台しか 駐車場がなかったから。」
 
「そうよ。こっちに引っ越して 麻有ちゃんが車買ったとき 正直 ほっとしたわ。」

とお祖母様も笑う。
 

「でも、慣れだから。今は 上手になったもの。恭子ちゃんも大丈夫よ。早くから 練習したほうがいいわ。」

麻有ちゃんが ほのぼのと言うと 智くんは苦笑して 首を振る。
 

「麻有ちゃん、恭子を煽らないでよ。」

と真剣に止める樹を みんなで笑う。


休日のリビングが 少しずつ 元の姿に戻っていく。

多分お祖父様も どこかで満足気に笑っているだろう。