安永景は親友の春山春太に小声で話しかけた。

「 春山、ちょっと聞くんだけど、男がさ男を好きとかって 」

「 なに?男と男がなんだって?!」

「 ばか!声でけぇよ 」

景は春山の腕を掴み、教室の後ろに引っ張った。いわゆるボーイズラブ好きな女子の皆さんの視線が一斉に刺さる。

「 何、お前、もしかして、俺のことそんな目でみてたのって、いてっ!叩くなよ、冗談だろ 」

「 もういい、お前には相談しねぇ 」

「 なんだよ、ごめんて、ちゃんと聞くからー 」

「 もういいっ 」

こいつに聞こうとしたのが間違いだった。
景が話題を変えて、二人が今ハマってるゲームの話をしようとすると、昼休みの教室のざわめきが一瞬消えた。

のどに飴玉が詰まったみたいな、息がグッとなる感じ。

「 久山、いる? 」

ドアの隙間から覗き込んだのは、飴玉より甘い声の持ち主だった。