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「ただいま……疲れた、死ぬ……」


「おかえり」


どうやら撮影が少し長引いたみたいで、予定より1時間くらい遅れて悝世が帰ってきた。




「……はぁ、俺もう無理依茉ちゃんとキスしないと窒息しそう」


「キスしたほうが窒息しちゃうよ」



相変わらずよくわかんないこと言うんだから。


まだ玄関先だっていうのに、電池が切れたようにドサッとわたしのほうに倒れてきた。



「うぅ……重いよ…っ」


ギュッと力を込めて、もうこれ以上くっつけないくらい隙間がないくらい抱きしめてくる。



「……とか言って、俺に抱きしめられるのすきなくせに。素直じゃないね依茉ちゃんは」


「うぅ……」



「キスされるのもすきだもんね」


「それは悝世がしたいだけでしょ……!」



「……よくわかってんじゃん」



抱きしめる力をゆるめて、下からすくいあげるように唇を重ねた。