悝世は、何も言ってくれない。
薄っすら目を開けてみるけど、あんまり見えない。
嘘つき……。
さっきわたしが困るようなことしないって言ったくせに……。
今ものすごく困らされてる……。
幼なじみらしくするって……言ったくせに。
こんなの、ちっとも幼なじみらしくない。
「……依茉」
「っ、」
あぁ、やだすごく悔しい。
キスされて名前を呼ばれたせいで、胸がキュウッと縮まって。
また熱が上がっていく。
複雑な気持ちがどんどん交差していく。
なんでキスなんかするの……。
悝世はわたしのことどう想ってるの……。
なんで他の女の子との撮影のとき、わたしのこと呼んだの……。
この前、瑠衣くんと2人で帰ったこととか、どう思ってるの……。
いろんな気持ちが駆け巡る中……。
最後に軽く音を立てて、
ゆっくりと唇が離れた。

