マンションを出て、篠田の車で役所に行ったあと
正式に受理をされて、あたしも正式に
三ツ谷から、篠田に変わった
名字だけが変わったから何が変わったわけじゃないけど
学園でも、三ツ谷のままでの生活になるし
ただ、その生活に翔哉がいないだけで
役所を出た時に
三ツ谷の車に乗せられたあたし
「終わったら、迎えに行くからちゃんとに待ってろよ」
「うん?」
「何で疑問形なんだよ」
「な、何でもないよ?」
「ほんとかよ」
「本当だってば」
婚約破棄されたときのことをどうしても
思いだしてしまうから、まだ、翔哉の言葉を信じ切れてない
自分が嫌い
「翔哉」
「あぁ。すいません。愛実をお願いします」
「はい。お預かりいたします」
ドアを閉めてくれた翔哉と離れて
京にぃの家に向かう
京にぃは、戸建てに住んでいると翔哉から聞いたことはあったけど
さほど遠くない場所に住んでいるのか
ただ、運転だったからはやかったのか
「お着きになりました。愛実様」
「あ、ありがとう」
「いいえ」
車から降りると、いつも通りの柚ちゃんの姿