学園に付いたあたしを降ろした場所は、
翔哉との思い出が詰まった寮だった

「お兄様・・・」

「愛実。お前はこの学園のプリンセスだ。
女子寮に入れてやりたかったが、お前の寮はここだ」

そっか
きっと、新しい婚約者が出来たら、ここに来るんだろうな
あたしは、翔哉以上に好きになることなんて出来ない。
まだまだ、男の人が怖くないと言ったら嘘になってしまう

「分かりました」

「愛実。ここは日本だ。お前が言いやすいようにしゃべりなさい。」

え?

「イタリアで、そういう風に言った方がいいと言われたのは知っている。
だが、ここは日本で、ここは学園だ。パーティーとかでは
その呼び方の方がいいかもしれないが、お前はまだ学生だ。そこまで
自分を殺して生活をしなくてもいいんだ」

「・・・っ伊蕗にぃって呼んでいていいの?」

「当然」

そうなんだ・・・

「愛実の学年は、今までと変わりはない。
いつも通り生活をすればいい」

「はい」

寮の中に入ったのを確認してから、車に乗り込んだ伊蕗にぃ

「さっきの電話って京にぃだよね・・・?
翔哉との婚約破棄を言ってなかったってどういうことなの?」

まだ、昼間だと言う時間帯だからこそ
支度をして、学園に行ったあたし。

「愛実!?」
「大丈夫なの!?」

「うん。ありがとう」

心配をしてくれる友達がいてくれる。
中には、三ツ谷という肩書があるからこそ、近づいてくる人たちもいるけど

「でも、びっくりだよね。篠田先輩」

「ほんと!愛実の事大事にしてくれてると思ったのに」

「急に婚約破棄するなんてね」

この学園の人間は知っていてくれる。
婚約破棄をしたことも

「しかも、お見合いするんでしょ?イタリアで」

「するんじゃなくて、もう、お見合いしちゃってたんだよ」

「「え?」」

「あたしじゃ、適うはずないような女の人とお見合いしたんだよ」

「何、言ってんの?」