今年だけで、来年には日本に戻りたいと言ってきた愛実。
レイとの婚約もこれで終わりにしたいと
何かあったのだろうか?

「愛実。何か・・・」

愛実の方を見ると、下を向いて肩を震わせている愛実の姿。
義兄(あに)である俺たちにですら、
あまり泣いている姿を見せないくらいなのに
今、目の前にいる愛実は、下を向いて泣いている

「翔哉を・・・見ちゃった」

「!?」

「あたしなんかが勝てるような人じゃなかった」

「何言って」

「あんなに」

「?」

「あんなに、優しそうな顔をして笑っている翔哉を
あたしは、日本でも見たことがないの」

「まな・・・」

「だから、この留学も、今年だけで終わりにする。
これ以上、自分を傷つけたくない。
レイにも、レイの彼女にもこれ以上、傷つけたくない」

「そうか。分かった」

だがな?俺達篠田は、今日本では大変な状況にあることを
翔哉が知らないはずがない。
あんな女と見合いして、仕事の提供があるにしても
三ツ谷には到底かなうはずがないのに

「ごめんなさい」

「何がだ」

「わが、まま・・・だよね」

「こんなの、ワガママだとは言わない」

「え?」

「愛実は、何事にも俺達にも言わないで
ため込んで、勝手に解決しようとするからな。
これ位、ワガママだと、俺も京介も思っていない」

「そっか」