踊り手、なりませんか?

「舞もダンス部に入ったら?そしたらずっと一緒にいられるし」

スティーブンの言葉に、舞はすぐに首を横に振る。頭にあるのは早苗のことだ。早苗が踊れないのに自分がダンスを楽しむわけにはいかない。

「もったいないと思うんだ。君の踊ってみた動画を見たことがあるけど、とても上手だし」

「今は休止中だよ。もうあんな風に踊れる自信はないし」

「そんなことないと思うけどな〜」

スティーブンの言葉は嬉しかった。しかし、舞は素直に喜んではいけないとギュッと拳を作る。何となく、二人の間に気まずい空気が流れてしまった。

「スティーブン!ちょっと待って!!」

後ろから声がして舞とスティーブンは振り返る。大きく息を切らしながらブラウンの髪の女の子が走ってきた。カナダ人のエマ・ジョーンズだ。

「あなた昨日会場にスマホ忘れて行ったのよ!」

「マジか。センキュー!」

エマがスマホを手渡し、スティーブンは笑う。エマはダンス部のマネージャーをしている。