バレエ団の公演は 独特の華やかさがあって 特別な世界だ。

開演前の昂ぶった緊張感が、絵里加は好きだった。
 

今回の公演は “眠れる森の美女” 絵里加はフロリナ王女を演じる。

フロリナ王女の ソロとパドドゥは3幕目だけれど 1幕目、オーロラ姫誕生日の宴でも 絵里加は踊る。


仕度を済ませて楽屋で待つ間 いつもと違う緊張を感じる。

今回は、健吾が見ているから。
 

「派手なお化粧するから、絵里加のことわからないかも。」

と言って、絵里加は健吾に 出番と立ち位置を教えてあった。


健吾は、すぐに絵里加がわかるだろうか。

そんなことを考えるのも、少し楽しい。


元々、絵里加は 本番前の この緊張感が大好きだったから。