家族にも 友達にも 温かく見守られて 健吾と絵里加の恋は ゆっくり進んでいく。

絵里加は 6月のバレエ公演に向けて 練習が本格的になる。

健吾は レッスンが終わる時間に バレエ団まで迎えにきて 絵里加を家に送ってくれる。
 

「絵里加のバレエ見るの、初めてだね。」

家までの道のり、二人で路線バスに揺られて話す。
 
「ケンケンが見ていると思うと、緊張しちゃう。ちょっと恥ずかしいし。」

趣味で続けているバレエだけれど 絵里加は今回も ソロのパートをもらっていた。
 

「絵里加、クルクル回れるの?」

健吾の素朴な質問に笑い、
 
「うん。ここで回ってみようか?」

バスを降りると、健吾に肩を抱かれて歩く。
 

「駄目。他の人に見せると、損するから。」

健吾は笑いながら言う。
 


「今日は、パパの帰りが早いから。ケンケン、ご飯食べていって。」

毎日、家まで送ってくれる健吾に 母はとても感謝していた。
 
「ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えて。」

健吾も、快く家に上がる。
 

「ケンケン。数学、教えてくれる?」

リビングで教科書を開いている弟。
 

「俺に勉強を聞いちゃう?どれどれ。」

健吾は、気軽に応じてくれる。

健吾が家族に馴染んでいくことが、絵里加は嬉しかった。