「二人とも、まだ学生だから。そっちを最優先にしてね。」

母は、付け足す様に言う。
　
「はい。」

絵里加と健吾は、同時に言う。

そして顔を見合わせて、笑ってしまう。
　


「ねえ、もう付き合い認めたから　ケンケン　リラックスしてよ。ほらケーキ食べて。ゆっくり話そうよ。」

父は健吾と話して、健吾をもっと知りたいと思っている。
　

「そんな突然言ってもねえ。でも、本当に楽にしてね。」母も笑顔で言う。
　
「ケンケンは、絵里加のどこがいいの？」

父の誘導尋問が始まる。

父は、気持ちよく相手に話しをさせることが　とても上手い。
　

「絵里加、すごく性格が良いから。素直だし　いつも笑顔で　思いやりがあって。」

健吾は言う。
　

「そんなことないでしょう。」と父は笑う。

絵里加は、肩をすくめる。
　

「絵里加、すごい人気だけど。だいたいの人は　絵里加の外見しか見ていなくて。俺ももちろん、絵里加の可愛い顔も好きだけど。絵里加の可愛さは　内面から出ているので。」

健吾は、父につられて話してしまう。
　

「やだ、そんなことないよ。絵里加、わがままだし　臆病だから。」絵里加が言う。
　
「臆病なのは、大切に育てられたからで。でも、全然わがままじゃないよ。」

健吾は優しく言ってくれる。
　
「うち、女の子は絵里加だけだから。結構甘やかされていたよね、お祖父様達にも。」父が言う。
　
「翔先輩、姫って呼んでいましたよね、絵里加のこと。」健吾が笑う。
　
「今でも、姫って呼ぶの。止めてって言うのに。」絵里加は照れて俯く。
　

「そんなに　大切にされている絵里加だから　軽い気持ちで　付き合うつもりじゃないので。」

健吾は、温かい目で絵里加を見る。

父と母は、満足そうに目を合わせていた。