「さっき、言えなかったけど。絵里加も、ケンケンのことが好き。」

途切れがちに、絵里加は伝える。

最後の “好き” と一緒に、大粒の涙が落ちた。


健吾は、絵里加を胸に抱き寄せた。

健吾の手が、優しく絵里加の頭を撫でる。


絵里加も 健吾の背に腕を回し 身を寄せる。

健吾の鼓動が聞こえる。


家族以外の誰かに 初めて抱かれて。


健吾の胸板も 背中を抱く腕も 髪を撫でる力も すべてがしっくりと絵里加を包む。
 


ずっと絵里加を見て来た健吾だから。

絵里加がすべて 初めてな事を知っているから。


だから、ゆっくり 絵里加が求めるまで待っていてくれた。


絵里加のタイミングを乱すことなく、自然に距離を縮めていく。



二人は、まだ恋の入り口だから。

健吾はゆっくりと、進んでいく。