「絵里加、俺がずっと好きだったこと、知らないでしょう。」


しばらく海に入っていて 足が冷たくなった二人は 堤防に腰掛ける。

二人とも裸足のまま。並んで話す。
 

「中学のクラスも、高校も別だったから。」

絵里加は驚いて、健吾を見上げる。
 

「絵里加、そういう事 興味なさそうだったからね。ずっと人気あったのに。」

健吾は足元の砂をすくいながら、ゆっくり話す。
 

「絵里加、臆病だから。そんなに人気とかないし。」

絵里加が言うと、健吾は首を振る。
 


「中学の頃は、翔先輩が 絵里加に近付く上級生を くい止めていたからね。」

健吾は笑いながら言う。
 
「やーだ。本当なの?だから絵里加、モテなくなるんだよ。」

絵里加が言うと 健吾はまた フッと笑う。
 


「そのくらい、大切にされている絵里加だから、俺は簡単に声かけられなくてさ。」

健吾は、熱い瞳で絵里加を見る。

絵里加は、胸が震えて俯いてしまう。
 


「でも俺さ、絵里加のこと家族以上に 大切にする気持ち、あるからね。」

首を傾げて 健吾を見つめる絵里加の目に 涙が溢れてくる。