入学式を終えた後、健吾と絵里加は結子を連れて舎長先生に ご挨拶に伺った。

「先生、あの節は 大変お世話になりました。この度は、長女がご縁を頂けまして お世話になります。どうぞ、よろしくお願い致します。」

健吾が挨拶する一歩後ろで 絵里加と結子がお辞儀をする。


「こちらこそ。とても嬉しいです。絵里加さんによく似たお嬢さんですね。」

舎長先生が結子を見て 目を細める。

健吾と絵里加が、微笑んで顔を見合わせると、
 

「落ち着いていて利発で。当時の絵里加さんと同じ雰囲気を感じます。大切にお預かり致します。」

と温かい言葉を掛けて頂く。

健吾と絵里加がお辞儀をして
 

「よろしくお願い致します。」

と言うと、結子も一緒に頭を下げる。そして、
 
「間宮結子です。よろしくお願いします。」と言った。

誰も教えないのに 名前を名乗る結子に 健吾と絵里加は驚いて苦笑する。

舎長先生は、温かく結子を見て、
 

「はい。明日から楽しくすごしましょう。」と言ってくれた。
 

「結ちゃん、きちんとご挨拶ができて、とても偉かったわ。パパもママも、嬉しかったわ。」

帰り道、絵里加が言う。
 
「結子、一年生だもの。」

得意気に微笑む結子。


健吾は抱き上げたい衝動を堪える。

今朝結子に、抱っこはおうちの中だけと言われたことを思い出して。
 


結子を真ん中に3人で手を繋ぎ歩く。

健吾も絵里加も、溢れる幸せを噛みしめて。

明日から始まる結子の学校生活が、楽しく充実することだけを願いながら。