健吾の20才の誕生日。

二人はもう一度 横浜のホテルで食事をする。

絵里加の誕生日より 日暮れの早い秋。

レストランからの眺めは、夜景になっている。


「ケンケン、お誕生日おめでとう。」
 
「ありがとう、絵里加。」

絵里加の瞳は もう潤んでいた。

4か月前 ここで乾杯したときには こんなに熱い今日を想像できなかった。

今の絵里加にとって 健吾は かけがえのない存在だから。

身も心も許した初めての男性。

「絵里加の誕生日、俺 まだ不安で。自分にも自信がなくてさ。でも 今は俺 自信満々だから。俺以外に 絵里加を幸せにできる奴いないって思っているからね。」

健吾は、真っ直ぐに絵里加を見つめる。

絵里加は 今にも溢れそうな涙が 瞼の縁で震えている。

小さく頷いた絵里加から 涙が落ちる。


「ありがとう。絵里加も。ケンケンに相応しいのは、絵里加しかいないって思っているよ。」

何粒も流れる涙の間、絵里加は言う。
 

「俺達、同じだね。」

健吾はテーブルの上で絵里加の手を握る。
 
「うん。同じ。怖いくらい幸せ。」
 
「俺も。」

熱い瞳で もう一度乾杯をする二人。

絵里加が用意したプレゼントは 二人のお財布と同じブランドのキーケース。

間もなく出来上がる新居の鍵を入れる為に。
 

「わあ。絵里加、ありがとう。」

差し出した包みを開いて 健吾は歓声を上げる。

健吾は絵里加の意図をわかってくれた。
 

「俺達の家の鍵、付けるね。」

健吾の笑顔に絵里加も微笑む。

家が完成したら 入籍を待たずに住みはじめる予定だったから。