絵里加の家族は 思いやりを認めてくれる。

言葉で言って 喜んでくれる。

だから、どんどん優しい気持ちになれる。


「軽井沢、涼しいから、散歩しておいで。」

お祖母様が、二人に言う。

「そうだ。ケンケンに パパとママの思い出の場所とか 教えてあげるね。」

笑顔で言う絵里加に 母は、はっとして
 

「絵里ちゃん、余分な事はケンケンに教えなくていいのよ。」と言った。



健吾と手を繋いで歩く、午後の別荘地。

木陰はとても涼しくて 道を逸れて林の中に入っていく二人。
 

「パパとママも子供の頃 この森で遊んだらしいよ。」

木漏れ日を受けた絵里加は キラキラ輝いて妖精のように美しい。
 

「へえ。子供にとっては 最高の遊び場だね。自然がいっぱいで。」

健吾は、絵里加を眩しそうに見つめる。
 
「絵里加達も、小さい頃遊んだよ。一日中いても飽きないの。」

都会の子供達は きっと夢中で遊ぶだろう。

大きな木、小さな木。落葉、木の実、虫。柔らかな土、沢山の石。
 

健吾は、手と足を汚して遊ぶ 幼い絵里加を想像する。

その頃の絵里加のことも 知っているから。

元気で優しくて 正義感が強くて。

今より怖い物知らずで。


あの頃から、絵里加は特別な女の子だった。

いつも輝いていた。
 

「絵里加。」

健吾は 木陰で絵里加を抱きしめる。

健吾の胸に すっぽりと抱かれた絵里加は そっと顔を上げる。


「絵里加。」

もう一度 そっと呼んで 健吾は唇を重ねる。

欲望以上の 愛おしさに捕らわれて。


身も心も美しい絵里加の、身も心も与えられた充実。

絵里加を守る為なら どんなことでもできると思いながら 長い口づけを交わす。