恋が始まる時なんて 何でもないことが きっかけなのかもしれない。

ドラマのような 劇的な出来事が ある訳でなく。

一瞬で 運命の人と感じる、特別な出会いの必要もない。



ずっと知っていた幼馴染を、大人の男性と意識する時。

ただの友達と思っていた彼の目に、自分への好意を感じた時。
 


絵里加は 少し自分の気持ちを 持て余していた。


教室の中に、健吾の姿を捜してしまう。

一瞬でいいから、友達の頭越しでいいから、目を合わせたいと思う。


スマホのバイブに敏感になってしまう。
 

まだ健吾と、付き合っている訳でもないのに。

告白されてもいないのに。


絵里加の中では、健吾が特別な存在になっていた。



そして絵里加の表情は、切ない甘さを滲ませる。